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インターネットブラウザを開いて「医学物理士」で検索をかける人なんてほんとにごくまれであろう。なので、このページをご覧になっているということは少なからずこの仕事に興味を持っているということだと筆者は勝手に思っています。

ここでは医学物理士とはどのような仕事をしているのか?また、医学物理とはどのような学問なのかをまだまだ経験が浅い小生ですが、自分なりのこれまでの経験から感じたことを書いていきたいと思います。

これからこの分野に進もうとお考えの方の参考になれば幸いです...

 

さて、前置きはほどほどにして

 

医学物理士の業務ですが、端的にいうと物理的な知識・技術を医療の現場に応用し患者の治療に貢献しようという仕事です。

 

日本では主に放射線治療分野の医学物理士が大数を占めていますが、核医学分野や放射線診断の分野も本来は範疇に含まれます。

 

なぜ日本では放射線治療の分野が多いかというと、放射線治療は手術と同じくらい治療行為のリスクが高い治療だからです。そして昨今はコンピュータ技術の高度化もあり照射技術や治療計画の計算方法も発展しました。裏を返せばしっかりとした知識に基づいて治療計画が立てられていないと重大な過ちに気付かず患者に放射線を当ててしまう危険性があるのです。また、日本はすでに高齢社会になり必然的に高齢者のがん患者も増加することになります。こうした患者は体力的な面から手術や抗がん剤治療はできないケースも多くなり放射線治療が適応される頻度は高まるでしょう。というわけで日本ではまず最も需要として必要視された放射線治療の分野で医学物理士を増やして行きましょうという流れになったわけです。

 

実際の業務内容はというと

1)放射線治療計画の立案・作成

2)治療の品質管理

3)新たな治療技術および装置の開発・研究

4)教育活動

 

などが挙げられます。普段は主には1)と2)がメインだと思いますね。

 

各項目をざっくり説明すると

1)の放射線治療計画の立案・作成というのは放射線腫瘍科の医師らと共に実際に患者の治療に使う治療計画を治療計画用ソフトを用いて作成していく業務になります。当然ですが医師と議論していくので医師と同等な疾患に対する知識や解剖学の知識を持っていなければなりません。また、どの角度から放射線を当てたらよいのか、放射線の種類(X線、電子線、陽子線、重粒子?)、照射法(IMRT、VMAT)などなど検討していく項目は多岐にあります。

 

2)の治療の品質管理ですが、これはその名の通り計画通りの治療が安全に行えるように治療装置の点検をし、治療の質を担保する業務です。

一例をあげるとすると、装置の出力が変化していないかを確認する作業があります。装置の出力が気付かないうちに変化していたら過剰照射や逆に過小照射という医療事故になってしまします。どちらにしても新聞沙汰です。

 

3)の新たな治療技術および装置の開発・研究というのは臨床での問題点をフィードバックしそれらを解決するような装置や技術を開発・研究しましょうということです。現状の問題を常に把握し、更に最新の情報を仕入れて今までに無かったものを生み出す。これは少しハードルが高い仕事ですがやりがいがあると思います。これができれば論文も書けますし、国内のみならず海外の学会にも参加しに行けます。当然ですが英語力(会話も)必須スキルです。

 

4)の教育活動というのは業務にはカウントされないかもしれませんが、例えば病院内の他部門のスタッフに対する放射線に対する勉強会をしたり、一般市民に放射線治療の理解を深めてもらうための啓蒙活動の様な事であったりすると思います。大学等で後進への指導をしたり、講師として公演を依頼されたり教科書の執筆ということもあると思います。

 

どうでしょうか?あなたにとって人生をかけて取り組んでみたい仕事でしょうか(^_^;)?

 

ちなみにですが、医学物理士は欧米では認知度も高く医者並みのステイタスがある業種の様です。海外では理工系出身者しかなれなずポスドクにあたるような人たちが更に医学物理の教育を受けてなるようです。初年度の年収で1000万なんていう話も聞いたことがあります。病院でのポストもしっかりありキャリアもあります。まさにアメリカンドリームのような話。

 

しかし日本では...

 

まだまだ認知度が低い仕事で他の医療職の様に国家資格でもないので立場としては不安なところもあります。ですが筆者がこの道に進もうと決めた頃よりは募集する施設も増えているように思いますし、大学院の教育コースを設置する大学も増えています。国もがんプロフェッショナル養成プランというものを掲げて後押ししています。国としても今後重要性の増すであろうがん治療を担う人材確保が急務であるからです。今後需要が増すことは確かだと思います。

 

 

決して儲けられる仕事というわけではないですが、今日の医療の中で必要とされる仕事の一つであるということは確かだと思います。そして今後もこの分野を目指す我々の努力次第で発展していくと思います。

 

ということでなんとなくでも医学物理士の概要が伝わっていただけたでしょうか?

医学物理士とは...?

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